パフォーマンスマーケターからいちばんよく聞かれるのは、「広告にはどの AI 動画モデルを使えばいい?」という質問です。正直に答えると、それは問いの立て方が間違っています。唯一のベストなモデルはなく、新しいバージョンが出るたびに数週間おきに順位が入れ替わります。大事なのは、モデルをカットに合わせることです。話し手が映る UGC クリップ、商品をぐるりと見せるヒーローカット、スタイライズされたモーション作品では、それぞれ向いているエンジンが違います。
Hermoso では Veo 3.1、Seedance 2.5、Kling 3.0 を本番環境で振り分けて使っており、ひとつに賭けるのではなくジョブごとに選んでいます。これは現場目線の比較です。公開ベンチマークではなく、実際に出しているレンダーをもとに、それぞれのモデルが広告のどこで本当に役立つかを紹介します。
Veo 3.1:ネイティブ音声とリップシンク
広告制作における Veo 3.1 の強みは、音声を映像と同じ処理の中でネイティブに生成することです。唇と音声がひとつのプロセスから生まれます。この性質ひとつで、AI 動画でいちばんしつこい「バレるポイント」が解決します。別に生成した口に TTS 音声をくっつけたときに起きる、吹き替え映画のような口パクです。人間の知覚はこのずれを容赦なく見抜き、グレーディングでは隠せません。
だから、口が画面に映って話す必要があるなら、私たちはまず Veo を使います。話し手が映る推薦コメント、創業者がカメラに向かって話す動画、誰かが話すことを軸にした UGC のコンセプトなどです。人がセリフを言うフォーマットでは、ネイティブでリップシンクした音声が、モデル間のほかのどんな品質差よりも価値を持ちます。
その代わり、Veo はコンテンツポリシーが厳しめです。ブランド名、肖像、お酒に関わるものは過剰にブロックしがちで、ほかに問題のないプロンプトが弾かれることもあります。私たちのパイプラインでは、そこで拒否されると行き止まりにならず、自動で別のモデルに切り替わります。それでも、カットが実在のブランド名や見覚えのある顔に頼るなら、考慮すべき点です。
Seedance 2.0:ネイティブ音声、ひと続きのテイク、参照画像による一貫性
Seedance 2.0 は、広告の主役になるカットを担う私たちの主力モデルです。本物の手に持たれ、回され、置かれ、注がれる商品のカットです。本物の商品写真を参照として渡すと、実物の正体(ボトルの形、ラベルの形状、その商品ならではの色)を見事に保ちます。参照なしのテキストプロンプトのように、それっぽい「親戚」をでっち上げたりしません。画面に映る商品が店頭の商品と同じでなければならない DTC や消費財のクリエイティブでは、この参照画像から動画への忠実さがすべてです。
Seedance が広告に向いている2つ目の理由は質感です。説得力のある手持ち感と、スマホカメラらしい粒子感を出せます。少し不完全で飾らない写り方は、ツヤツヤの CM ではなく本物の UGC として受け取られます。マットな肌とニュートラルな光の方向にプロンプトを向けると、「誰かがスマホで撮った」感じをほかのモデルよりうまく出してくれます。
さらに2つの性質があります。Seedance は音声(声、部屋の空気感、その場の環境音)を映像と同じ処理の中でネイティブに生成します。だから UGC のスポットは、吹き替え待ちの無音クリップではなく、最初から話していて、部屋に合った空気感のある状態で出てきます。そして、ひと続きの1回の処理で最大15秒まで保てます。これは聞こえ以上に重要です。ワンテイクなら、ビートの間に継ぎ目がなく、途中で照明を作り直すこともなく、言葉の途中でカットが入ることもありません。15秒以下のシングルパスの短い UGC では、たいてい Seedance に振り分けます。商品、粒子感、音をひとつのきれいなテイクにまとめてくれるからです。主な限界はどのモデルにも共通するもので(下のモーションの項を参照)、何かを投げたり落としたりさせないことです。
Seedance 2.5:途切れないワンテイクで30秒
そこに Seedance 2.5 が登場し、ここまでの話の前提だった上限を動かしました。30秒を頼んだところ、出てきたのは 30.08秒。音声付きのひと続きのテイクで、ハードカットはゼロです。クリップをつなぎ合わせた30秒ではありません。カメラが一度も止まらなかった30秒です。
広告クリエイティブにとって、これはスペックの向上と聞こえる以上の出来事です。このジャンルが生まれてからずっと、生成できるワンテイクの実質的な上限は15秒でした。それより長いものはつなぎ合わせるしかありませんでした。ビートを別々にレンダーし、光を合わせ、つなぎ目を隠す。継ぎ目こそ AI 広告がボロを出すところです。グレードが少しずれる、部屋の空気感が1フレームだけ消える、ビートの間で役者の髪型がリセットされる。30秒のシングルパスは、つなぎ合わせそのものをなくすことで継ぎ目をなくします。フルのプレロール、商品のストーリー全体、始まりと終わりのあるデモが、すべてひと続きのカットとして流せます。
音もいっしょについてきます。2.5 は映像と同じ処理の中で同期した音声(セリフ、空気感、部屋の環境音)を生成し、それが初期設定でオンになっています。音声をオンにしてもオフにしても料金は同じです。さらに、実在の人物の写真をフォトリアルに動かせます。顔を渡せば、様式化された代役ではなく、本物の肌の質感のままその人が画面に映ります。
トレードオフは解像度です。2.5 のレンダーは 480p と 720p で、1080p の選択肢はありません。だから、フル HD で仕上げる必要があるヒーロースポットは、いまも 2.0 の仕事です。まさにこういう判断のために振り分けがあります。長さ、解像度、実在の顔を映す必要があるかは3つの別々の問いで、その3つすべてに同時に答えられるモデルがひとつしかないことはまずありません。
Kling 3.0:顔の参照による同一性、どのレンダーでも同じ人物
広告制作における Kling 3.0 のいちばんの強みは同一性です。顔の参照画像を渡すと、テイクをまたいでもレンダーをまたいでも、同じ顔立ち、同じ存在感でその人物を保ちます。これで、パフォーマンスチームが AI 俳優に本当に求めているもの、つまり繰り返し登場するクリエイターが手に入ります。先週の勝ちフックに出ていた顔が、今週の3つのバリエーションにも出られるので、視聴者は広告のたびに知らない人ではなく、見覚えのある人に出会います。勝った出演者は、一度きりの運任せではなく、使い回せる資産になります。
3.0 のほかの特長も広告向きです。Seedance と同じく、映像と同じ処理の中で音声をネイティブに生成します。長さは固定の尺に合わせるのではなく、3秒から15秒まで自由に選べるので、台本をテイクに合わせるのではなく、テイクを台本に合わせられます。そして、これまでの Kling を人気にした画像から動画への生成も、いまだに優秀です。静止画(商品写真、キーフレーム、ブランドのアートなど)から始めると、ほとんど止まった画を少し動かすのではなく、自然な動き、カメラワーク、コントロールされた躍動感を加えてくれます。
Kling を含め、どのモデルでも私たちが気をつけているのは放物運動、つまり重力下で物体が本当に自由に飛ぶ動きです。投げたボトルが一瞬長く宙に止まり、一定の速さで回転し、重さを感じさせずに着地します。これは Kling 特有の弱点ではありません。質量と勢いは、いまもどのモデルにとっても難しいのです。対策はモデル選びではなく振り付けです。商品は持つ、回す、置く、注ぐ。手が物体を運び、モデルが重力を自力で解く必要のない動きにとどめましょう。
結局どれが勝つのか?
私たちが実際に使っている、大まかな判断ルールです。
- 誰かがカメラに向かって話し、クローズアップが重要 → Veo 3.1。ネイティブでリップシンクした音声のため。
- 本物の商品を持つ、扱う、UGC の粒子感、最大15秒のワンテイク → Seedance 2.5。本物の商品写真に基づかせて。
- カットなしの長いスポット、最大30秒 → Seedance 2.5。480p か 720p で、最後までひと続きのテイクを保ちます。Hermoso で順次提供中です。現時点の振り分けは15秒のワンテイクが上限で、それより長いものはつなぎ合わせています。
- キャンペーン全体で同じ顔、または静止画に動きを加える → Kling 3.0。顔の参照画像を軸に。
これが法則ではなく目安にとどまるのは、モデル同士が抜きつ抜かれつを続けているからです。バージョンがひとつ上がるだけで、かつて別のモデルの強みだったものが別のモデルに移ることがあります。だからこそ、私たちはユーザーに選ばせません。Hermoso はジョブごとにそのカットに最適なモデルへ振り分け、新しいリリースが出るたびに振り分けを調整します。上の選択はレンダーごとに自動で行われ、あなたが変更履歴を追う必要はありません。
それに、良い広告にとってモデル選びは小さいほうの半分です。AI 広告が見破られるポイント(ロウのような肌、崩れたラベル文字、黄金色のグラマーなグレード、どんな物体も従わない物理)は、ほとんどがモデルを動かす前と後のパイプラインの判断です。モデル自体が原因であることはまれです。Hermoso の AI 広告ジェネレーターには、そうした対策が組み込まれています。テカりを抑えるリアルさの層、シーンに合成された本物の商品写真、モデルに描かせず後処理で合成するすべての文字とロゴ、口が映るカットに限ったネイティブ音声。モデルは自動で選ばれ、技術は最初から組み込まれています。
その裏で、同じ Studio が Meta、Google、LinkedIn の広告ライブラリとオーガニックの TikTok を横断して、あなたの市場ですでに勝っているものも調べます。だから1フレームもレンダーする前から、コンセプトが実績あるクリエイティブに基づいています。無料プランには、カード不要で獲得できる250以上の無料クレジットがあります。正確な費用は、毎回のレンダー前にアプリに表示されます。モデル論争に決着をつけるいちばんの近道は、自社の商品で広告を生成して仕上がりを判断することです。振り分けはもう選んでくれています。
よくある質問
広告にいちばん向いている AI 動画モデルは?
唯一のベストはありません。Veo 3.1 はカメラに向かって話すカットのネイティブ音声とリップシンク、Seedance 2.0 は参照画像による商品の忠実さ、ネイティブ音声、最大15秒のワンテイク UGC、Seedance 2.5 はワンテイクの長さ(計測で30秒、カットなし、ネイティブ音声付き)、Kling 3.0 は顔の参照による同一性(レンダーをまたいで同じ人物)と画像から動画への生成で、それぞれ先行しています。正しい選択はカット次第で、順位はリリースのたびに入れ替わります。Hermoso はすべてのジョブを最適なモデルに振り分けます。
AI で生成するワンテイクはどれくらいの長さにできますか?
Seedance 2.5 なら30秒です。30秒を頼んで計測したところ、ネイティブ音声付きでハードカットのない、ひと続きの 30.08秒のカットでした。それ以前は15秒が上限だったので、長い広告は複数のクリップをつなぎ合わせて作られてきました。1回の処理なら隠すべき継ぎ目がありません。グレードのずれも、ビートの間で消える空気感もありません。解像度は 480p と 720p なので、1080p で仕上げる必要があるスポットは、いまも短いテイクの仕事です。
リップシンクがいちばん優れているモデルは?
私たちの経験では Veo 3.1 です。映像と同じ処理の中で音声をネイティブに生成するので、唇と音声がひとつのプロセスから生まれます。不気味な口パクは、別に生成した TTS をレンダー済みの口に吹き替えることで起きます。TTS は口が映らないカットに限りましょう。
本物の商品を正しく見せ続けてくれるモデルは?
Seedance 2.0 は、本物の商品写真を参照として渡し、物体をシーンに合成すれば、商品の正体をよく保ちます。テキストのプロンプトが表すのはカテゴリー、参照画像が固定するのは正体です。だから、商品を言葉で説明するより、本物の写真に基づかせるほうが上手くいきます。
キャンペーン全体で同じ役者を保てるモデルは?
Kling 3.0 です。顔の参照画像を渡すと、レンダーをまたいでその人物の同一性を保ちます。毎回新しい顔が出てくるのではなく、繰り返し登場するクリエイターがシリーズ広告全体の顔になれます。
AI 動画が、投げたり落としたりする物体を苦手とするのはなぜですか?
放物運動(重力下で物体が自由に飛ぶ動き)は、どのモデルを使っても、いまのモデルの物理が目に見えて破綻するところです。振り付けで避けましょう。商品は持つ、回す、置く、注ぐにとどめ、手が物体を運び、モデルが重力を自力で解く必要がないようにします。
Hermoso ではモデルを自分で選ぶ必要がありますか?
いいえ。Hermoso はレンダーごとにそのカットに最適なモデルへ振り分け、新しいバージョンが出るたびに振り分けを調整します。変更履歴を追ったりモデルを選んだりする必要はありません。あなたは広告の内容を伝えるだけで、あとは振り分けが引き受けます。